耳よりだより

2018年10月23日

健康な状態と要介護状態の中間「フレイル」

最近、健康な状態と日常生活でサポートが必要な状態の中間の状態として「フレイル(虚弱)」という概念が注目されています。
フレイルとは、体重の減少、疲れやすさ、歩く速さや筋力の低下などがみられ、このままでは要介護の状態になる可能性が高い状態をいいます。
今回は、「サルコぺニア」とも関連のある「フレイル」についてご紹介します。



フレイルとは

フレイルとは、海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty(フレイルティ)」という概念に対する日本語訳です。「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などになります。


フレイルは、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」とされており、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。多くの方は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられていますが、高齢者においては特にフレイルが発症しやすいことがわかっています。

フレイルの状態になると、死亡率の上昇や身体能力の低下が起きます。また、病気にかかりやすくなったり、重症化するなど、ストレスにも弱い状態になっています。

たとえば、健常な人が風邪をひいても数日すれば治りますが、フレイルの状態になっていると風邪をこじらせて肺炎を発症したり、だるさのために転倒して打撲や骨折をする可能性があります。

また、入院等の環境の変化に対応できずに、一時的に自分がどこにいるのかわからなくなったり、自分の感情をコントロールできなくなることもあります。


フレイルは、身体的・精神的・社会的な3つの側面が相互に影響し合って起こるといわれています。

●身体的側面・・・低栄養、転倒を繰り返すこと、嚥下・摂食機能の低下など
●精神的側面・・・認知機能の低下や意欲や判断力の低下、抑うつなど
●社会的側面・・・家に閉じこもりがちとなって他者との交流の機会が減少する

身体的・精神的・社会的な多側面から総合的に働きかける必要がありますが、フレイルの兆候に早く気付いて対応すれば、フレイルの状態から健常に近い状態へ改善したり、要介護状態へ進まずにすむ可能性があります。




フレイルの基準

フレイルの基準にはさまざまなものがありますが、一般的に以下の評価基準が採用されていることが多いようです。

1.意図しない体重減少:6か月間で2~3kg以上減少、もしくは1年間で4.5kgまたは体重の5%以上減少
2.疲れやすい:週に3-4日以上、わけもなく疲れ、何をするのも面倒だと感じる
3.歩行速度の低下:区間の前後に1mの助走路を設けた5mの測定区間を歩行する時間が5秒以上
  (横断歩道を青信号のうちに渡れない速度)
4.握力の低下:利き手の握力測定で、男性26kg/女性18kg未満
5.身体活動量の低下:軽い運動・体操及び定期的な運動・スポーツのいずれもしていない

1~5の基準のうち

・3項目以上該当するとフレイル
・1~2項目該当するとフレイルの前段階であるプレフレイル

と判断します。



フレイルの予防

フレイルを予防することの意味は、2つあります。1つはフレイルに陥らないようにすること、もう1つはフレイルが進行するのを防ぐことです。対応方法はどちらも似ているので、フレイルの予防としてまとめて説明します。


フレイルは、適切に予防すれば日頃の生活にサポートが必要な要介護状態に進まずにすむ可能性があります。フレイルを予防するには、フレイルのメカニズム(フレイルサイクル)を良く理解し、身体的・精神的・社会的側面に総合的に働きかける必要があります。

具体的には、生活習慣病の(進行)予防をしながら、運動機能・認知機能の低下を防ぎ、社会的に関わりを保ち続けることが大切です。


フレイルは栄養問題と密接にかかわりがあります。

食欲低下や嚥下機能の低下などで食事の摂取量が減ると低栄養に陥り、体重が減少してサルコペニアに至ります。サルコペニアになると、加齢や慢性疾患の影響もあり疲労感・筋力の低下、それに伴い身体機能の低下につながり活動量が減ります。活動量が減ることで、エネルギー消費量が減り、食欲低下につながります。こうなると完全に悪循環です。

このような負のサイクルを「フレイルサイクル」といいます。


フレイルは、対策次第では健康状態に戻ることができます。自立したままで生活の質を維持するためには、以下の1~3の状況に合わせて適切な対応をとることが重要です。

1.まずは、 日々の生活習慣を見直し、健康増進を意識する(フレイルのリスクを断つ)。
2.フレイルの兆候が表れたら早期発見・早期対応をする(フレイルの兆候を早く発見し、対応する)。
3.フレイルと診断されたら、 重症化を防ぐ(要介護状態になることを防ぐ)。


また、フレイル予防には周りのサポートも大切です。家族や知人にフレイルの兆候が出ていないかを確認してみましょう。

一人暮らしの高齢者は、一人で食事を摂る孤食となりがちです。孤食では食事の品数も減り、食べる食材も偏りがちとなります。食欲が低下すると食べる量も減り、低栄養状態に陥りやすくなります。積極的に友人や家族、地域の人などと共食の機会をつくり、低栄養を防いで心身の健康維持を保ちましょう。




フレイルとは、体がストレスに弱くなっている状態のことを指しますが、早く介入をすれば元に戻る可能性があります。
高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険があります。